Neulakinnastekniikka is my psychotherapy

ネウラキンナスは私の精神安定剤

Feb 3, 2020

フィンランドを含む北欧で長く使われてきた手工芸技術であるネウラキンナス。大きめの針で縫うようにして編んでいきます。

ネウラキンナスは、世界中の多くの国で使われてきた、何千年もの歴史を持つ非常に古い編み物技術です。フィンランドではネウラ(=針)キンナス(=ミトン)と言う名の通り主にミトン型の手袋を作るテクニックですが、それ以外にも靴下、レグウオーマー、帽子、ニット帽、マフラー、ベストなどの小物や、特別なものでは牛乳を濾過する時に使うフィルターや馬着を作る時にも使われた技術です。

 

ネウラキンナスの道具

大きな穴のある、大きめの平たい針が道具です。長さは普通8-12cmぐらいですが、それよりも長めでも短めでも大丈夫です。幅は太い部分で1cmに満たない程度。素材は木や金属、動物の骨も使われてきました。近頃はプラスチック製のものもあります。

道具を扱っているショップ:

針:

Kirjosalvi(キルヨサルヴィ)

Lankava(ランカヴァ)

Ullaka(ウッラカ)

Toika(トイカ)

 

糸:

糸はZ糸が理想的です。(通常の糸はS状態によりがかかっていますが、ネウラキンナスでは縒りがS式にかかっているとその縒りが開いていくことになります。そのためねウラキンナスではZ式の糸が理想的とされています。しかしZ式はほとんど流通していませんのでまずS式で試してみるといいと思います。手紡ぎ糸はZ式に縒りがかかっていますのでこの技術に適しています。以下、Z式の糸が入手できるショップです。

Pirtinkehräälö(ピルティンケフラーモ)

 

ネウラキンナスの特徴

このテクニックは現在一般的とも言える編み物の技術とは構造的にも異なりますが、その特徴の一つは糸の使い方にもあります。棒針やカギ針で編む時には長い糸を玉にし、その糸の一方の先から順ぐりに編み続けることができますが、ネウラキンナスの場合、使う分を一回一回切り、使う分だけを針に通し編んでいきます。

右利きの場合、製作中の部分は左手に、針は右手に持ち、縫うような動きで糸をすくいながら左から右に編み進みます。この構造的な特徴のために、ネウラキンナスは棒針やカギ針の仕事のように糸を引っ張ることによって解くことができません。ネウラキンナスを解く時には編み進んだ目を一つ一つ解かなければなりません。

たくさん編んでしまった後に失敗に気づいた時には、後戻りは不可能ではありませんが、非常に手間がかかることになります。

反対にいうと、棒針・かぎ針で作ったものの場合、一旦小さな穴が開くとそこから糸がどんどん解け大きな穴へと広がってしまいますが、ネウラキンナスはその特徴のために、たとえば穴が開いてもそこから大きな穴へと広がることはありません。

 

ネウラキンナスの歴史

ネウラキンナス・テクニックは、世界中のいくつもの国々でそれぞれの歴史上のある時期に広まっている、とても古い手仕事技術の一つです。フィンランドでも色々な名称で呼ばれながら、その伝統はカルヤラ地方や北フィンランドそして東フィンランドにおいては忘れ去られることなく続けられてきています。戦後の1950年代、これらの地方ではネウラキンナスによって作られたミトンはとても一般的なものでした。この技術を持った人は減少はしましたが、それでも技術は今でも残されています。その昔ネウラキンナスで作られたミトンや靴下は、非常に暖かく、丈夫であったので貴重なものとされており、牧師への礼金などの支払い手段としても使われていました。

 

ネウラキンナスは世界中で色々な名称で呼ばれています。

nalbinding (英語), naalbinding (英語), nalebinding (英語), single needle knitting (英語), needle binding (英語), nail binding (英語), nålbindning (スウェーデン語), söma vantar (スウェーデン語), nåla vantar (スウェーデン語), nålebinding (デンマーク語、ノルウェー語), naaldbinden (オランダ語), Nadelbinden (ドイツ語), Nadelbindung (ドイツ語), Schlingentechnik (ドイツ語), Freihandmethode (ドイツ語), вязание иглой (ロシア語), Наальбиндинг (ロシア語), nõeltehnika (エストニア語), tkanie igłą (ポーランド語), vattarsaumur (アイスランド語).

 

ネウラキンナスについて

ネウラキンナスについては、そのテクニックをフィンランド人のSanna-Mari Pihlajapihaさんが非常に詳しくまとめていらっしゃいます。ビデオも豊富できっと役に立ちますので是非参考にしてください。

この記事には以下のリンクから内容を参考にさせていただいております。

Neulakintaat/ネウラキンナス・テクニック、サンナマリ・ピフラヤピハ(フィンランド語)

Nalbinding-Nålbindning-Nälebinding/ネウラキンナス・テクニック、サンナマリ・ピフラヤピハ(英語版)

PUNOMO/プノモ

Neulakintaat-ビデオ

 

ネウラキンナスの効用

私が初めてネウラキンナスに取り組んだ時にはまだ十分な資料に出会う前で、非常に苦労した記憶があります。始めの目作りの仕組みがよくわからず、何度もやり直しました。ただ失敗すると糸を解くのに時間がかかるので初めはあまり糸などを使い、始めの目づくり部分を何度も練習してはそのまま新しい糸を手に取る、、というようにしていました。ビニール袋一杯分の練習ピースが今でも残っています。

ネウラキンナスの技術は非常に様々で、糸のすくい方は地方により、また人によっても異なりますし、道具もとても様々です。つまりたとえ貴方のやり方が他の人と異なっていても、その「自分のやり方」は決して間違っているわけではありません。

作り目をマスターすればあとはかなりシンプルな動きを繰り返すだけなので、ストレスの全くない作業です。サクサクと糸をすくう作業は私にとっては精神療法。ひと目ひと目編むごとに硬く結び目になっている心の糸が解ける感じ。。就寝前に数段編むのが私にとっての至福のひとときです。

リストウオーマーをいくつか作りましたが、この装着感には不思議な感触があります。肌に張り付くような特徴のある収縮性があり、棒針・カギ針で製作したものとは異なる肌触りがあります。

そして、針一本!というシンプルこの上ない道具でできるのはとても楽です。長旅に出るときにも持って行きやすい。時に人を待つことになったり、バスや電車を待たなければならない、といった状況に陥った時も返って「ラッキー!!」と思えるんです。

今まだやっと基本技術を習得したばかりでまだまだ初心者ですが、少しづつ続けたい技術です。